2016年09月26日

小説『中学生も色々と』その58

おはようございます。この記事は予約投稿です。

私の作った小説『中学生も色々と』第58話(その58)です。
このお話はフィクションであり、登場する人物、団体、企業等は
実在のものとは一切関係ありません。

樹廊臣物語中学生シリーズ

                中学生も色々と

           その58「芸術の秋-合奏の授業」

 今回はちょっとメルヘン。
 皆さんは動物に似合う楽器はなんだと思いますか?例えばたぬきにはたいこが似合うと思いませんか?(モグラにはスコップが似合うと同様のイメージで)今回はそんな動物と楽器とのお話です。

 からちゃんの通う中部中学校、音楽の授業で合奏をすることになりました。演奏曲は『エテ、ゴリラ、チンパンジー』と言うマーチの曲です。音楽の先生が、
「それではみんなで、それぞれが担当する楽器を決めましょう。」と言いました。合奏の楽器決めです。
「たぬきちゃん(狸山さんのこと)はたいこでいいよねー。」誰かが言いました。狸山さんは
「えー?たいこ?私アコーディオンがいい。」と言いましたが、
「だってあなた狸でしょう。狸って言ったらたいこでしょう。」と言われました。他の人からも
「じゃあ狸ちゃんたいこね。」
「狸と言えばたいこだ。」
「狸にたいこはつきものだ。」
「狸に一番似合う楽器はたいこである。」
「狸なんだからたいこを演奏すればいい。」
「狸なんだからやる楽器はたいこしかない。」と言われてしまいました。
 「ムッカッあ~。」そう言われた狸山さんは不機嫌になりました。そして
「私、アコーディオンがいいの。」と言いました。
「えーっ。狸なのにアコーディオン?!似合わなーい!やっぱり狸と言ったらたいこよねー。」みんながそう言いました。狸山さんは怒って言います。
「私が『狸だからたいこ』って、そう言うステレオタイプな発想をされては困るわ!」と。
「ステレオタイプって何よ?」
「固定観念ってことよ!」
「固定観念?そりゃ誰だって『狸イコールたいこ』の固定観念を持ってるだろ。」みんなそう言いました。
 「まあまあ。適材適所って言葉があってだな。狸さんならたいこが一番適しているだろう。」先生までもがそう言いました。
「先生もそう言ってるよ。」
「毎日たぬきの腹づつみをして練習しているんでしょ。」何人もの人がそう言いました。狸山さんは、
「腹づつみ?!なんでそんなこと言うの?!私が狸だから?!」と、怒って言いました。みんなは、
「あれ?腹づつみしないの?狸なのに?」と言いました。狸山さんは、
「しないわよ!狸をなんだと思ってるん?」と、抗議しました。みんなは
「狸はたいこだと思ってる。」と言いました。狸山さんは、
「私が狸だからってバカにしてるのか?」と、怒りました。みんなは、
「バカになんてしてないよ。むしろ狸山さんのことを尊敬してるよ。狸山さんのおかげでリレーだって一位になったしさ。」と言いました。
「もっと狸だということに誇りを持て。」誰かが言いました。狸山さんは、
「誇り?持ってるわよ!」と言いました。
「じゃあたいこで良いじゃん。」誰かはまた言いました。狸山さんは、
「良くないわよ!私はアコーディオンをやりたいんよ!それを勝手にたいこだと決めつけて!」と怒りました。
 「はいはいはい。ケンカしなーい。」先生が仲裁に入りました。先生は、
「狸さん、別にたいこでも良いじゃない。似合うと思うよ。」と、先生までもが言いました。狸山さんは先生にまで怒って
「だから私、たいこは嫌なんですぅ!」と言いました。先生は、
「はいはい、楽器は今日決めなくても良いから、試しにたいこをたたいてみなさい。」と言いました。意外に嫌な先生です。
「先生まで……。」
「『山の音楽家』という歌があってだな、その歌詞の中に『音楽家のたぬき上手にたいこをたたきましょう』と言う歌詞(音楽著作権に引っかかるのでちょっと歌詞を変えてあります)があってだね。やまのたぬきは上手にたいこをたたいてみせるんだ。な、試しにたいこをたたいてみろ、な。」先生は言いました。
 そして、狸山さんがたいこをたたいてみると、
「ポンポコポンポコ、ポンポコポンポコ、ポンポコポンポコ、ポンポコポンポコ……。」それが上手いのなんのって!みんな、
「さすが狸!」と、尊敬したのでした。
 ですが狸山さんは不服でした。
「プッツン!」狸山さんはプッツンきれちゃって教室に戻るとムシャクシャしてウポンのゾックンの檻を蹴っ飛ばしました。
「ビー!ビー!ビー!」ゾックンは怒りました。家に帰ると、
「お母さん!どうして私を狸に生んだのよ!」と、怒って言いました。狸山さんのお母さんは
「はあ?何言ってんの?狸から狸が生まれるのは当たり前じゃない。」と言いましたが、狸山さんは、
「それでも嫌だったんよ!」と言いました。狸山さんのお母さんは、
「じゃあ何、キツネの方が良かったんの?」と言いました。狸山さんは、
「キツネの方がずっと良かったわよ!」と言って抗議しました。お母さんは、
「学校で何かあったの?」と、狸山さんに尋ねました。狸山さんは、
「有ったわよ!音楽の授業で、『狸だからたいこだ』って決めつけられてすごく嫌だったんよ!」と言いました。お母さんは、
「どういうこと?」と、聞き返しました。狸山さんは
「今日、音楽の授業で合奏の楽器を決めることになったの。それで私はアコーディオンをやりたかったんだけどね、みんなが『狸だからたいこだ』ってステレオタイプに決めつけられたの。音楽の先生までもがそうよ!それが嫌でね、なんで狸だとたいこをやらなきゃいけないの?おかしいじゃない!ふざけるな!って感じよ。」と言いました。お母さんは、
「まあ、先生まで……。」と、あきれて、学校に抗議してくれました。
 次の音楽の授業時間、PTA(狸山さんのお母さん)から抗議された音楽の先生は、
「狸さん、この間は悪かった。君の気持ちも考えずにごめんなさい。」と謝りました。狸山さんは
「じゃあ、私、アコーディオンでいいですね?」と言いました。音楽の先生は
「いいよいいよ。アコーディオンでいいよ。」と言いました。これで狸山さんはめでたく念願のアコーディオンを演奏できることになりました。
 「ブカ、ブカ、ブカ、ブワーッ。」しかし、狸山さんの演奏するアコーディオンは下手くそでした。
「うまくいかない……。」狸山さんはやりたかったアコーディオンが上手くできないことが残念でしたが、
「ここでできなかったら、『狸山はたいこしかできない』と言われてしまう……。がんばってアコーディオンをものにしなきゃ。」とがんばりました。しかし、
「ブワ、ブワ、ブワ、ブワーッ。」どうしてもアコーディオンは上手くできません。音楽の先生は、
「あんだけたいこがうまかったのに、もったいないなあ……。狸さんはたいこの天才だ。是非たいこを演奏させたいなあ。」と、思いました。
 たいこはからちゃんがやっていました。
「ポンポコポン。」小さなおなかのからちゃんはあまりたいこには向いていない感じでした。(できないというわけではない)音楽の先生は、
「春田沢さん、ちょっと狸さんと替わりなさい。」と言いました。そして狸山さんに
「狸さん、どうしても君の美しいたいこのハーモニーを聞きたいんだ。頼む、もう一回だけで良い。たいこを演奏してくれないか?」と頼みました。狸山さんはしぶしぶ
「ポンポコポンポコ、ポンポコポンポコ、ポンポコポンポコ、ポンポコポンポコ……。」と上手にたいこをたたきました。それがやっぱり上手いのなんのって、先生をはじめとしてみんなが感動して涙を流しました。不良の渡利君までもが感動して涙を流しました。音楽の先生は
「実に素晴らしい!狸さんのたいこ、聞くことができて良かった!」と言いました。狸山さんはやっぱりアコーディオンがいいと言ってアコーディオンに戻りました。あまり上手くはなかったけれど、アコーディオンができて満足な狸山さんでした。

※狸山さんは、元々は今回のたいこネタのために生み出されたキャラクターです。でも、大活躍ですよね。

                その58おわり       その59につづきます



同じカテゴリー(小説『中学生も色々と』)の記事画像
小説『中学生も色々と』その483
小説『中学生も色々と』その469
小説『中学生も色々と』その421
小説『中学生も色々と』その307
小説『中学生も色々と』その296
小説『中学生も色々と』その290
同じカテゴリー(小説『中学生も色々と』)の記事
 小説『中学生も色々と』がアニメ化された夢 (2020-11-07 04:28)
 小説『中学生も色々と』その513(最終回) (2019-05-13 04:25)
 小説『中学生も色々と』その512 (2019-05-07 04:25)
 小説『中学生も色々と』その511 (2019-05-03 04:25)
 小説『中学生も色々と』その510 (2019-05-02 04:25)
 小説『中学生も色々と』その509 (2019-04-28 04:25)

この記事へのコメント
狸山さんにとって、たいこの演奏は恥ずかしかったと言いますか、
「狸だからたいこ」と決めつけられるのが嫌だったのです。
狸山さんはアコーディオンをやりたかったのですし。
この後でアコーディオンも演奏もうまくできたみたいですよ^^
Posted by 樹廊 臣 at 2016年09月26日 06:21
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。