2019年04月25日

小説『中学生も色々と』その508

 おはようございます。この記事は予約投稿です。



 私の作った小説『中学生も色々と』第508話(その508)です。
このお話はフィクションであり、登場する人物、団体、企業、事件等は
実在のものとは一切関係ありません


樹廊臣物語中学生シリーズ

                  中学生も色々と

             その508「小心太郎不幸になる」

 2019年4月25日木曜日です。からちゃんと小心太郎が棚牡丹高校に入ってから約1ヶ月が経とうとしています。
 「春田沢さん。一体どうしちゃったのかなあ?この前の入学お祝いテストだけど、5教科合計で178点しか取ってない。」からちゃんのクラスの1年1組美事川先生は高校入学後初の面談で言いました。からちゃんは、
「抜き打ちのテストだったでしょう……。だから点が低いんです。」と、言いました。美事川先生は、
「春田沢さんは高校入試の試験では5教科合計で304点も点を取った。順位は152位だったのに。」と、得点分布を表した図面をからちゃんに見せて言いました。その図面にはもちろん名前は出ていませんが各人の得点の位置が「点」で映し出されていました。
 「一番上の500点満点の人は梅鉢さんですか?」からちゃんは聞きました。美事川先生は、
「そういう個人のプライバシーに答えることはできないよ。でも、お察しの通り。うちのクラスのあの天才だよ。」と、言いました。そしてからちゃんは、
「一番下の184点しか取ることができなかった人は……?一人だけ目立って点が低くなってしまって……。」と、言いました。美事川先生は、
「ああ……。この一番下の子は入試本番の日に体調がものすごく悪くて、点が上がらなくて高校落ちちゃったんだよね。」と、言いました。からちゃんは、
「この一人だけですよね。今年度棚牡丹高校不合格だったのは……。」と、言いました。美事川先生は、
「そうだよ。不合格はこの子一人だった。」と、言いました。からちゃんは、
「この不合格になった子、私の大切なお友達なんです。ひな乃ちゃんと一緒に『おんなじ高校行こうね』って言い合っていたんです。かわいそうに……。」と、言いました。そしてからちゃんは続けて、
「小心太郎は何点で順位はどれくらいだったんですか?!教えてください!」と、言いました。美事川先生は、
「だからそういう個人のプライベートなことは教えることはことはできないよ。とにかく春田沢さんはもっと勉強できるので高校入試の時のように勉強を頑張りなさい。」と、言って面談を打ち切りました。
 面談後からちゃんは、
「小心太郎がこの高校に受かったからこでなずさんが落ちた!」という怒りが燃え上がってきました。
「小心太郎!許さん!」からちゃんは小心に対する怒りで満ちていました。
「私の大切なお友達であるこでなずさんを落とした小心め!小心が落ちればこでなずさんは合格した!カッカカッカプンプン!」
 その日の放課後のことです。沖川高校の制服姿のこでなずさんが棚牡丹高校にやってきたのです。こでなずさんを見たからちゃんはびっくり!
「あれ?!こでなずさんなんでここに?」と、からちゃん。
「やだなあからちゃん。棚牡丹に遊びにおいでって言ったのはからちゃんでせう。今日沖川は早く終わったから覗きに来たわけよ。」と、こでなずさんは言いました。
 「ヨタヨタ。」ちょうどそこへ下校しようとしている小心が通りかかりました。
「あっ!あいつだ!こでなずさん!こでなずさんはあいつのせいで棚牡丹落ちたんよ!待てえ!小心!からちゃんは小心太郎を呼び止めました。」
「わあ。春田沢さん……。」と、怖がる小心。
「?!」と、何が何だかわからないこでなずさん。からちゃんはこでなずさんに、
「こでなずさん、説明するね。こいつが小心太郎。中中の癌!こいつのせいでこでなずさんは棚牡丹高校に落ちたのよ!」と、言いました。こでなずさんは、
「なに?どういうこと?からちゃんの言っていることがわからないんだけど……。」と、言いました。からちゃんは、
「高校入試の時、棚牡丹高校は募集定員よりも受験者数が一人多かった!だから必ず誰か一人が落ちることになる!こでなずさんは落ちてしまった。その一人になってしまった!この小心太郎が受かったからこでなずさんは棚牡丹落ちた!小心!この子(こでなずさん)はね、私のとても大事な苑中のお友達なの!だけど小心!貴様が受かったせいでこでなずさんが落ちた!小心!私は貴様を一生許さない!こでなずさんに土下座して謝れ!こでなずさん、あんたも言ってやれ言ってやれ!この小心太郎という癌のせいであなたは落とされたのよ!」と、言いました。するとこでなずさんは泣きそうな顔で、
「からちゃん!そんなことないわ!この人は悪くない!」と、言い、小心に、
「ごめんね!ごめんね!あなたは何も悪くない!」と、言ってからちゃんを引きずっていきました。
「ポカーン」と、小心はしていましたが、
「こでなずさんって言うんだ……。沖川高校の制服。苑中の天使……。なんてかわいい天使……。」と、目がハートになっていました。遠くから、
「ヤダ小心!目がハートになってる!まさかこでなずさんに惚れちゃったんじゃないでしょうね!この助平!」と言うからちゃんの声が聞こえてきましたが。
 さて、そんなからちゃんは最近どんどんとお友達を棚牡丹高校で作り、そのお友達に、
「あの小心太郎だけどね、私あの小心と中中で同じクラスだったわけよ。小心ってね、すごく気持ち悪いんだよー。」と、言いふらしていました。お友達は、
「気持ち悪い?そんなふうには見えないけれど……。」と、言いましたがからちゃんは、
「ほんとほんと、すごく気持ち悪いやつなの。私だってスカートめくられたし。人間として最低。あなたも小心に何されるかわからないから気をつけて。」と、小心のことを中傷していました。そう言われた他校出身のお友達は、からちゃんの言うことを信じ、
「そう言われてみればなんか気持ち悪いかも……。」と、思うようになってしまったのです。小心は、中中時代に女子全員から「気持ち悪い」と言われて差別されていました。他校から来た女子は、小心のことを知りませんので、小心を「気持ち悪い」とは全然思っていなかったのですが、からちゃんの中傷により、
「そう言われてみれば気持ち悪いかも~。」と、思うようになってしまいました。それ以降、棚牡丹高校でも小心に対する女子からの差別が始まったのです。中学生時代の小心を知っている人と同じクラスになった小心の哀れな運命でした。
 小心にとって他校生は天使、からちゃんをはじめとする中中生は悪魔だったのですが、からちゃんのせいで他校生も悪魔になってしまったのでした。
 ただ一人、同じクラスになったひな乃ちゃんは、からちゃんがいっくら、
「あいつ、小心太郎って言ってね、とっても気持ち悪いやつなんだよ。スカートもめくるんだよ!」と、言っても、ひな乃ちゃんはあまりに自我が強すぎるがために、からちゃんの中傷には心を動かされずじまいで、
「ふーん。そう。興味なし。」と、小心を気持ち悪いとは思わないのでした。それだけひな乃ちゃんは頭が良いということなんでしょうか?
 からちゃんのせいで悪魔のようになった他校出身女子は、
「小心、キモいー!」と、小心を攻撃しましたが、ひな乃ちゃんは小心を攻撃しませんでした。
 男子はと言うと、この時点では小心に対するいじめはありませんでした。そして、小心を気に入って仲良しになってくれた田上西部中出身の沢樹君という男子(いい人)といじめの話になりました。
「実は、僕、俺は中中でいじめられていたんだ。」と小心が言うと沢樹君は、
「そうか、でも、西中のいじめはもっとひどかったぞ。」と言うのです。小心は、
「俺のいじめもひどかった、ほら、腕に鉛筆の芯が刺さって……。」と言うと沢樹君は、
「だから、違うって、西中でいじめられていたやつは殴られすぎて顔が二倍くらいに腫れ上がって顔が原形をとどめていなかったんだぞ。タロ君はそこまでされてないらに。」と、言うのです。
「顔が原形をとどめていなかったー?」と、驚く小心。
「そう、顔が原形をとどめていなくて超悲惨だった。と、沢樹君。
「確かにそこまではされてない。」小心はそのとき気づきました。
「僕、俺は中中でいじめられていたとき、自分が一番ひどいいじめを受けているんだって思い込んでいたけど、世の中には俺よりもひどいいじめを受けていた人がいたんだ。確かに俺は顔が原型をとどめなくなるほどのひどいいじめは受けていない。俺は、『自分が一番不幸なんだ』と、いじめられているときに勘違いをしていたんだ。俺よりももっとひどいいじめを受けていた人はいたんだ。知らなかった……。今、沢樹君の言葉で気がついたよ。」と、小心は気付いたのです。そして同時に、「自分が一番世の中で不幸だったんだ」と、勘違いしていた自分を恥じました。まあ、いじめで苦しんでいる人はすごく苦しいですから、そう勘違いをするのも無理はないのですが……。しかし、小心に対する中学時代のいじめは数日後にまた起こるのでした。

               その508おわり        その509につづきます





次回の「小説」は4月28日の発表です




個人的メモ:2019-0422点検済



同じカテゴリー(小説『中学生も色々と』)の記事画像
小説『中学生も色々と』その483
小説『中学生も色々と』その469
小説『中学生も色々と』その421
小説『中学生も色々と』その307
小説『中学生も色々と』その296
小説『中学生も色々と』その290
同じカテゴリー(小説『中学生も色々と』)の記事
 小説『中学生も色々と』がアニメ化された夢 (2020-11-07 04:28)
 小説『中学生も色々と』その513(最終回) (2019-05-13 04:25)
 小説『中学生も色々と』その512 (2019-05-07 04:25)
 小説『中学生も色々と』その511 (2019-05-03 04:25)
 小説『中学生も色々と』その510 (2019-05-02 04:25)
 小説『中学生も色々と』その509 (2019-04-28 04:25)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。